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『人を動かすナラティブ』で学ぶ、物語や言説が人間や社会に与える影響と対処法

こんにちは。このブログでは、私が読んだ本の感想やおすすめを紹介しています。今回は、毎日新聞編集委員でジャーナリストの大治朋子さんの最新作『人を動かすナラティブ なぜ、あの「語り」に惑わされるのか』について書きたいと思います。

この本は、物語や言説としてのナラティブが、人間の心や行動、社会や世界にどのような影響を与えているのかを、科学的かつ多角的に分析した一冊です。

ナラティブは、心理療法や教育においては有効な手段となりますが、同時に、テロや陰謀論、世論操作などの「情報兵器」としても使われています。



私たちは、自分の人生や社会的な現象を物語形式で理解し、記憶する傾向がありますが、そのカニズムを知ることで、自分の思考や感情をコントロールし、他者のナラティブに惑わされないようにすることができます。


この本を読んで、私が特に興味深く感じた点は以下の通りです。


・ナラティブは、人間の脳に直接働きかける力を持っています。

誰かの「語り」に共感を覚えると、共感ホルモンであるオキシトシンが分泌され、ナラティブ・トランスポーテーションと呼ばれる状態に入ります。

この状態では、物語の世界に入り込み、自分の意見や判断力を失い、物語に沿った行動をとりやすくなります。

この現象は、テロや過激思想に走る人々にも見られますが、逆に、自分の人生に意味や目的を見出すためにも利用できます。


・ナラティブは、人工知能やデータ分析などの技術を使って、個人や社会を動かすために操られています。

著者は、米国の軍事技術研究機関や英国のデータ分析企業などに取材し、彼らがどのようにナラティブを生成し、拡散し、効果を測定しているのかを明らかにしています。

特に、不正に入手したSNS上の個人情報や、人間の認知癖を分析し、特定のナラティブに感染しやすい人々を狙って世論操作をする手法は、恐ろしいと感じました。


・ナラティブは、自分の人生を紡ぐためのツールとしても使えます。

著者は、紛争や自然災害で過酷な経験をした人々が、そこに何らかの「意味」を見いだすことで新たな人生物語を再構築し、生きる力に換えていく姿を紹介しています。

また、自分の物語を自らの手で紡ぐためには、生身の人間と交わり、五感を磨き、読書で想像力を育むことが大切だと説いています。


この本の背景や著者についても触れておきたいと思います。

著者の大治朋子さんは、新聞協会賞を2年連続で受賞したほか、ボーン・上田記念国際記者賞なども受賞した傑出したジャーナリストです。

本書の取材のきっかけは、エルサレム特派員時代に、過激派組織イスラム国がSNSで発信するナラティブに少年たちがのめり込み、「自爆テロをすれば天国に行ける」という物語を信じて命を捧げていたことに衝撃を受けたことだそうです。

その後、世界各地でナラティブのメカニズムを追いかけ、本書を執筆したとのことです。


この本は、物語や言説としてのナラティブが、人間の心や行動、社会や世界にどのような影響を与えているのかを、科学的かつ多角的に分析した一冊です。

ナラティブは、心理療法や教育においては有効な手段となりますが、同時に、テロや陰謀論、世論操作などの「情報兵器」としても使われています。

私たちは、自分の人生や社会的な現象を物語形式で理解し、記憶する傾向がありますが、そのメカニズムを知ることで、自分の思考や感情をコントロールし、他者のナラティブに惑わされないようにすることができます。

この本は、ナラティブに関心のある人はもちろん、自分の人生や社会に意味や目的を見出したい人、情報に惑わされずに自分の意見や判断力を持ちたい人におすすめです。

この本は、下記リンクから購入できます。ぜひ、読んでみてください。