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心の苦痛を緩和するために依存する人たちに寄り添う「誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論」

こんにちは、この記事では、精神科医であり、依存症の専門家である松本俊彦さんの著書「誰がために医師はいる――クスリとヒトの現代論」を紹介します。

この本は、松本さんが長年にわたって依存症の患者さんと向き合ってきた経験や思いを赤裸々に綴ったエッセイ集です。

依存症という病いの本質や社会的背景、治療の難しさや可能性、そして医師としての使命や苦悩などについて、深く考えさせられる一冊です。

この本を読んで私が感じたことは、以下のようなポイントです。


・依存症の患者さんは、快楽を求めて薬物やアルコールに手を出すのではなく、心の苦痛を緩和するために依存するのだということ。

松本さんは、患者さんの訴えに秘められた悲哀と苦悩の歴史に寄り添い、その背景にあるトラウマや孤立、貧困などの社会的要因を見逃さない。

依存症は、個人の問題ではなく、社会の問題でもあるということを教えてくれる。


・依存症の治療は、単に薬物やアルコールを断つだけでは不十分であるということ。

松本さんは、患者さんに対して強制や抑圧を行わず、自己決定や自己効力感を尊重する治療プログラムを開発し、実践している。

また、患者さんの社会復帰や回復の支援にも力を入れ、地域や行政と連携している。

依存症の治療は、人間関係や生活環境の改善も必要であるということを示してくれる。


・依存症の患者さんは、スティグマや偏見に苦しめられているということ。

松本さんは、メディアや社会が依存症に対して持つ誤ったイメージや情報に対して、正しい知識や理解を広めるために積極的に発信している。

また、依存症から回復した人たちの声や存在を伝えることで、希望や勇気を与えている。

依存症の患者さんは、人として尊重されるべきであるということを訴えてくれる。


この本を読んで、私は自分の中にあった依存症に対する無知や偏見に気づかされました。

私は、依存症の患者さんを「意志が弱い」「快楽主義」というレッテルで切り捨てていたのではないかと反省しました。

また、依存症の治療に携わる医師の苦労や責任にも敬意を感じました。私は、この本を読んで、依存症に対する理解や共感を深めることができました。


この本の背景や著者についても触れておきたいと思います。

この本は、松本さんが2021年に発表した半生記であり、月刊「みすず」で連載されていたエッセイを書籍化したものです。

松本さんは、1967年生まれの精神科医で、国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部長を務めています。

1993年に佐賀医科大学を卒業後、横浜市立大学医学部附属病院精神科や国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所司法精神医学研究部などを経て、2015年より現職に就いています。

著書に『自傷行為の理解と援助』『自分を傷つけずにはいられない』『もしも「死にたい」と言われたら』『薬物依存症』などがあります。また、インタビューや対談などでも、依存症に関する知見や見解を多く発信しています。


この本は、依存症に関心のある人はもちろん、医療や福祉の現場で働く人や、家族や友人が依存症になったという人にもおすすめです。

この本は、依存症の患者さんの心の声や姿をリアルに伝えるとともに、依存症の治療に携わる医師の思いや挑戦を率直に語っています。

この本を読むことで、依存症に対する誤解や偏見を払拭し、依存症の患者さんや回復者に対する理解や支援を深めることができるでしょう。

この本は、下記リンクから購入できます。ぜひ、手に取ってみてください。