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あなたは本当に作品を味わっていますか?「映画を早送りで観る人たち」が教えてくれるコンテンツ消費の現在形

こんにちは。今回は、映画やドラマを早送りやスキップしながら観る人たちの心理や社会的背景を分析した本、「映画を早送りで観る人たち」(稲田豊史著、光文社新書を紹介します。


この本は、なぜ映画やドラマを早送りやスキップしながら観る人たちが増えているのか、その理由や影響を探る一冊です。著者の稲田豊史さんは、映画配給会社やキネマ旬報社で働いた経験を持つライターで、エンタメ事情に詳しい方です。彼は、自分の周りにも早送りやスキップ視聴をする人が多いことに気づき、その動機や感想を聞いてみると、驚くべき答えが返ってきたと言います。

例えば、「時間がないから」「作品の内容がつまらないから」「ネタバレされたから」「自分の好きなシーンだけ観たいから」というような理由で、映画やドラマを早送りやスキップしながら観る人たちがいます。彼らは、作品のストーリーや登場人物の感情に共感したり、作者のメッセージを考えたりすることよりも、自分の快適さや効率さを優先しています。彼らは、作品を鑑賞するというよりも、消費するという姿勢で視聴していると言えます。

このような視聴スタイルは、現代社会の特徴とも関係しています。稲田さんは、以下のような要因を挙げています。

  • 情報過多:インターネットやSNSで、常に新しい情報やコンテンツに触れることができます。そのため、古いものや知らないものに興味が薄れます。また、自分の好みや価値観に合わないものに対しては、すぐに切り捨てます。
  • 時間不足:仕事や勉強などで忙しい人が多く、自分の趣味や娯楽に使える時間が少なくなっています。そのため、できるだけ多くのコンテンツを短時間で消化しようとします。
  • プレッシャーSNSやリアルな社会で、自分の好きなものや意見を発信したり共有したりすることが求められます。そのため、自分が見ていない作品や話題についても知っておかなければならないと感じます。また、自分の好きなものが他人に否定されたり批判されたりすることを恐れます。

  • 快適主義:自分にとって不快なものや難しいものは避けて、快適なものや簡単なものに囲まれたいという欲求が強くなっています。そのため、作品に対しても深く考えたり感じたりすることを避けて、自分に都合の良い部分だけを取り出します。


これらの要因は、映画やドラマだけでなく、本や音楽などの他のコンテンツにも当てはまります。稲田さんは、このようなコンテンツ消費の現在形が、私たちの感性や思考にどのような影響を与えているのか、また、それに対してどのように対処すべきなのか、提言しています。


この本を読んで、私は自分の視聴スタイルやコンテンツに対する態度を見直すきっかけになりました。私も時々、早送りやスキップ視聴をしてしまうことがありますが、それは本当に作品を楽しんでいるのか、それとも単に消費しているだけなのか、疑問に思うようになりました。また、作品に対して自分の感想や評価を持つことの大切さや難しさも感じました。


この本は、映画やドラマが好きな人はもちろん、コンテンツに触れることが多い現代人にとって、読んでおくべき一冊だと思います。作品を鑑賞するということは、作品と自分との対話であり、自分自身を知ることでもあるということを教えてくれます。この本を読んで、あなたも作品と自分との関係を見つめ直してみませんか?