読書体験から豊かな人生を

読書体験から、新たな人生価値を見つけましょう

「ナニワ金融道」全巻一気読み。これはリアルな社会の教科書だ。

「街金」に勤める主人公が遭遇する人間模様を描いた漫画「ナニワ金融道

ナニワ金融道 1


漫画単行本の19巻全冊を一気読みしてみた。これは実社会を生き抜く上でのリアルな教科書だと感じた。
描かれた時代背景や、作品に伏流する作者の思想といったものを考察し、実生活への活かし方を考えてみた。

<目次>

1.描かれた時代背景、内容

ナニワ金融道」は1990年に「週刊モーニング」誌で連載が始まり、1999年に終わっている。平成初期時代に連載されており、ちょうどバブル経済が崩壊しはじめ、地価が下落し不良債権問題で経済の停滞が始まった時代に重なる。この10年間は、まだ、高度成長期の余韻があったが、連載が終了する1999年頃には山一證券の破綻など金融危機もあり、低成長時代が決定的になり格差社会化が進んだ。

ナニワ金融道」では大阪の街金業者「帝国金融」に新入社員として入社した主人公「灰原」がいろんな借り手(中小企業経営者が多い)と出会い、貸した金を回収する中でさまざまなトラブルと遭遇する。多様な人間模様の中で主人公が一人前の「街金マン」に成長していく姿が描かれている。

2.作者「青木雄二」の思想

この漫画の中では、市井の中小企業やそこに勤める労働者といった人がお金にかかわるトラブルに遭遇し、街金業者に身ぐるみ剥がされていく様をリアルに乾いた視線で描く。
どの話も実話にもとづき、現実的な叙述をする態度で出来事が観察され、そこに勧善懲悪色はない。「悪者は誰だ」といった追求や「社会の理想像」を主人公が語るといったシーンはなく、淡々と白黒つけずに人間模様が描写されていく。
シリーズの最後の方で若手警察官僚のキャラクターが出てくること以外は、国家、大企業は登場人物としては出てこない。しかし、「お上」の政策の元で、苦悩する庶民階級の姿がありありと描きだされている。

漫画単行本のカバーの裏に作者である「青木雄二」のミニコラム的な文章が掲載されている。内容からは国家や資本家といった「体制」に対する反骨といったものが読み取れるが、漫画の中ではそういった思想色は出さず、リアルかつドライに物語が組み立てられている。

3.「お金にまつわるトラブル」に巻き込まれないための教科書

この漫画を読むと、連帯保証人の怖さ、夜逃げ、取り込み詐欺、担保不動産の乗っ取り、ネットワーク商法、クレジットカード破産など経済社会の裏面を知ることができる。
連載は20年以上前に終わっている作品であるが、借金で失敗して転落する姿は現代でも同様だと思われる。

本作品は、生きた社会の教科書であり、これを読めば「お金にまつわるトラブル」についての前提知識が身に付くと思う。借金返済からはじまる転落の穴の深さ、怖さがよくわかるので、大学生の方などは社会を出る前にぜひ読むことをおすすめする。もちろん、社会人の方も生きていく上で「お金」と上手に付き合っていく必要があるので、この漫画に出てくる人々を反面教師として学ぶことは多いと考える。

4.まとめ

・漫画ナニワ金融道は1990年代に連載された「街金業者」を舞台とするストーリーである。
・「借金」をめぐるさまざまな人間模様がリアルかつドライに描き出されている。
・この漫画を読むことで「お金にまつわるトラブル」についての前提知識が身につく。


<参考>
いくつかの漫画サイトで電子版が全巻無料公開されているようだ。「ナニワ金融道 無料」で検索してください。